不登校トークセッション

不登校トークセッション Vol.6『不登校だった父と、不登校の娘の物語』~一緒に過ごす時間が、子の未来をつくる~ レポート

6月7日の不登校トークセッションは、京都市で「まなびのさき」という個別指導塾を経営されている清水大樹さんをお迎えしました。

清水さんの不登校のきっかけは、小学校時代の給食での体験でした。
給食中に吐いてしまったことから、「また吐いてしまうのではないか」と恐ろしくなって人と給食やご飯が食べれない嘔吐恐怖症を発症。毎日、給食の時間をいかに逃れるかを考えて、場所を移動したり、言い訳を考えたりして過ごしていたと聞いて、めちゃくちゃきつかっただろうなと思いました。

「給食の時間が近づくと、体が重くなって動けなくなる」という言葉に、不登校の子が登校時間に近づくと感じる“あの感覚”と重なるものを感じ、とても理解ができました。

そんな清水さんが安心できたのは、ご自宅でのお母さんの存在でした。
「残してもいいし、食べなくてもいいよ」とお母さんが言ってくれたことで、家では安心して食べることができたそうです。
この話は、不登校の子どもたちにも通じるところがありますよね。「学校行っても行かなくてもいいよ」と親が言ってくれたら、子どもはどれだけ気持ちがラクになるか…。自分で決められること、強制されないことの大切さを、あらためて感じさせてくれました。

清水さんは勉強がとても得意でしたが、中学受験に失敗したことが大きな挫折となり、「もう勉強なんかしない!」と決めてしまったそうです。
その後、姫路から1時間ほど離れた山間部に暮らしながら、田舎のヤンチャな少年になり、お母さんも本当にいろいろと大変だったようです。
その中でとても感動的だったのが、ある日の出来事です。
学校で問題を起こし、お母さんが呼び出されたとき、清水さんは「自分はやっていない」と言い張りました。その場でお母さんは「私は息子の言葉を信じます」と先生に伝えたそうです。けれど帰宅後、お母さんはトイレで泣いていたと後で知った清水さん。その姿が胸に刺さり、今となっては「母は本当にすごい」と語っておられました。

「きっと母は“子どもを信じる”と自分に言い聞かせていたんじゃないか」
そう語る清水さんの言葉に、私も深く頷きました。きっと、お母さんは子どもに悟られないように、泰然とした顔で、覚悟をもって接していたのでしょう。

小学校1年生の時に不登校を始めた娘さんのエピソードも参考にできることや、印象的なことが沢山ありました。
小学1年生で学校に行けなくなった娘さんが「お母さんかお父さんと一緒なら行く」と言ったため、清水さんと奥様が交代で毎日学校に付き添われたそうです。
清水さんは教室でパソコン作業、奥様は教室には入らず廊下で読書。その姿は、娘さんにとって「味方がいる」と強く実感できる時間だったのではないでしょうか。

「学校に行きたい時間に行き、帰りたくなったら帰る」という自由なスタイルを実践された時期もありました。ある日は、給食を食べるだけのために学校へ行ったことも。
最初は「学校はちゃんと行くべき」と考えていた奥様も、次第に考えが変わり、「学校にランチしに行くの?」と笑って送り出せるようになったとのこと。奥様の変化と柔軟さに、思わず胸が熱くなりました。

これまでワンオペで子育てを担ってきた奥様と、不登校をきっかけに多くの会話が生まれ、家族の絆が深まったといいます。

清水さんは、「どうしようもないことがあるねん。理解したって」と奥様に伝えたと語ってくれました。その一言に、人の痛みを理解する清水さんらしい深い想いを感じ、涙がこぼれました。「寄り添う」ということの本質を、あらためて見せてもらったように思います。

参加者の皆さんの様子と感想
参加された皆さんは、清水さんの豊かな経験と温かい語りに、最後までじっと耳を傾けておられました。

寄稿者は代表の駒井です。

◆参加者の声
「清水さんと奥様が、学校がしんどい娘さんに寄り添われていた姿勢が、娘さんの安心感につながっていたのだと思いました。私はまだそこまでできていないので、今日からもっと子どもを信じて、愛情をたくさん伝えていきたいと思いました。ありがとうございました。」

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